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講演録 3
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ケアの質を高めてサービスを充実
これからなんですが、介護保険サービスの制度にはいろんな問題がありますけれども、ケアの中身を進めたと思うんですね。介護職が一番利用者のことをわかっているという、これが大きな間違いだと思います。実際はわかってなかったんですね。でも、介護保険とか、身体拘束とか、いろいろいわれている中で、利用者という人はどういう人たちだったんだろう、今まで抑制した状態でしかアセスメントしてなかった、はずした状態のその人たちは見えなかったわけです。これからだと思います。介護保険というのはいろいろ問題はありますけれども、ケアの質を高めていく方向を見つけ出してくれたと思います。施設サービスか、在宅サービスか、今のところ2つに1つかみたいによくいわれます。在宅が駄目なら施設しかない、と。私がびっくりしたのは、4月に入所申し込みの電話がドンドンかかってくるんです。それは医療の世界で保険点数の請求の方法が変わったから、保険点数が少なくなったから余計に病院が社会的入院みたいな人を出してしまうんです。それが4月にドーッと行われたもんだから、施設に流れたんです。どうしてですか、と希望者にお聞きしたら、いきなり病院から、退所計画を立てておられますか、と聞かれましたと。それで、あわてて施設を探されるんですね。もう数カ所申し込んでいますと。介護保険の本来の目的は、在宅でできるだけ長く支えるのが大切なことだと思いますけど、今は支えられないし、在宅で長く暮らしていける家というのがないですね。特養に入所されても自立になったらまた地域へ帰って、といっても帰る家はないですね。入所申し込みされているのは家族なので、家族の家には絶対帰れないわけです。その他にもお年寄りが安心して暮らせる、そしてケアのついているようなというのがないですね、家がね。今は民間で、積極的に広がっているケア付き住宅がありますけれど、まだまだ費用が高かったりして、自立支援包括プログラムなんていうのがありますけれども、たとえ自立を支援できて、要介護度を軽くしても、帰せないです。そういう難しい問題があります。施設か、在宅かではなくて、もっと中間の住居であるとか、暮らしを支えられる場所というのをこれからもっとつくってもらいたいなと思います。だから今は施設サービスを選ばざるを得ない状態であって、うちも待ってらっしゃる方が60名以上いますけれども、在宅に帰せない以上、施設の質がもっともっと高くなって、「住まい」にならなければならないですね。だから施設も在宅なんですよ。
うちの施設は田尻町という小さな町の中に、地域の中に建っているんです。特養だけが別世界みたいじゃなくて、壁を低くして、地域に飛び出していって、地域と連続性のある特別養護老人ホームという形をとっていきたいと思っています。町内会ももっともっと外へ行って、往き来が自由になればそういうことが進んでくるんではないかと思っています。フィオーレというのは介護保険の中で指定介護老人福祉施設なんですけど、地域の中でフィオーレにいったら何かあるんだと、何かできるんだと、そういう場になりたいと思っています。例えば、施設の運営であるとか、経営であるとかが傾いたときに、この施設はお年寄りが暮らす施設だけではなくて、地域の中でこれだけ役にたっているんだよ、という、その事ができれば生き残っていく道もあると思います。経営はたぶん難しくなってくると思います。介護保険になって、各施設の利益は1割ぐらい増えていると思いますが、これから施設の建物が老朽化してきます。絶対建て直しをしないといけない時期がやってくるんですけどね。その時は措置の時代みたいにお金は出ないですね。自力で建て直さないといけないようになってくる。コストというのも非常に大きな問題になってきているのに、コスト意識は現場の職員に全然ないですね。与えられるものは全部使ったらいいんやないか、電気あるからつけといたらいいんやないか、暑いから冷房かけといたらいいんやないか。光熱費だとか、水道代であるとか全部詰め所に貼っておくんですけどね。やっぱりコスト意識のない人は駄目だと思います。自分たちの労働力もコストですね。ムリ、ムダ、ムラのないようにと。でも、生産性がある人だけが良いのではなくて、利用者が求めている人というのが大事ですね。おむつ交換が早い人とか、介助がすごく早い人、そんな職員はいらないと思うんですよ。利用者をどれだけ安心させ、落ち着かせてくれて、信頼されるかというのが大事だと思います。フィオーレの職員は凸凹チームでしてね、20代の職員が非常に多くて、そこへもってきて50代ぐらいの方が多くて、そこで介護の資質であるとか、専門性だとか、その中で優れた人は一人いるか二人いるかですね。どこの施設でもそうだと思いますけど、でもね、みんなすごく良いところを持っている。妊婦さんもいるんですね。妊婦さんが三人もいるんです。妊婦さんだから移乗はできないし、入浴介助もできないけど、その代わり今までしなかったことをしてくれるんですね。お年寄りの手を拭いてくれたり、お顔を拭いてくれたり、耳掃除してくれたり、爪切りしてくれたり、横に座って話してくれたり、それもケアですね。それで妊婦さんたちが赤ちゃんを産んだらまた帰ってきていただきたいなと思います。同じ人が長く勤められる職場というのは大事です。お年寄りというのは職員がコロコロ変わるとものすごく不安なんですね。同じ職員がズーッと関わっていけるような労働環境も大事だと思って妊婦さんも大事にしておりまして、その人たちが赤ちゃんを産んでくれるのを密かな楽しみにしております。女の人の労働力って大きいですよね。特に、介護の現場は殆ど女性です。男性はまだまだ少ないですよね。女の人は赤ちゃんを産んだらもう仕事に就けないのか、復帰してもよく保育所から電話がかかってくるんですね、子どもさんがいる職員に。「子どもさんが保育所で熱出ました、すぐ来てください」と。そしたら何を置いてもほっていかないといけない。安心して働けないですね。そうじゃなくて、一緒に出勤してきて、子どもはそこの保育所に、自分は働く、そういうことがしたいなと思って、今施設の中でイメージしています。
最後はやっぱり地域
今、ユニットケアだとかグループホームケアだとかいわれておりますけれど、田尻町から依頼されておりますグループホームを、3年後を目途に立ち上げようと思っております。ユニットケアというのは目的ではなくて通過点だと思っています。最後はやっぱり地域ですね。地域にもう一度、何かの形でかえれるような、例え、夜寝るのはフィオーレでも昼間はふれあいセンターで遊んでいるとか、そういうことがあってもいいじゃないかと思っています。
外出とか行くんですが、居酒屋とか、カラオケとか、回転寿司なんかも行くんですけど、地域の方々がうちのお年寄りをみても非常に温かい目で見てくださるんですね。おうどんなんかでもうちの施設で食べられるんだけど、うどん屋に行きたい、と行って、痴呆性の方なんか殆ど目が見えてなくて、お茶なんかこぼされたときに、お婆ちゃんあかんで、と言って横からまたお茶をいれ直してくれるような、温かい目で見ていただいています。お年寄りは、臭い、汚い、暗い老人ホームの中で寝てばっかりいる人たちではないんです。結構にぎやかに暮らしておられます。そういうことを地域の方々にも知っていただきたいし、社会にも知っていただきたいと思います。
第三者評価も大切
評価というのは当事者の評価と、提供者側の評価もありますね。あとは第三者評価ですね。市民の方の意見もそうですけど、オンブズマンに月に2回、来ていただいています。介護保険オンブズマン機構大阪から2名のオンブズマンの方がいらしてます。最初は、オンブズマンの人が来るからと緊張したけれど、緊張なんていうのは続かないから、今は「あの人ら、来てるわ」みたいな感じで、自然な振る舞いの中で、利用者に直接お話を聞きながら、いろんなことを聞き取ってくださっています。「オンブズマンの人に言いました」と。「海見たいと言うてはるんで、何とかしてください」とオンブズマンの方に言われて、海が見える所にお連れしたら、海やなかった、浜やったんやと。漁師やってたから浜が見たかったんや、と言われて。浜なんか今ないんですね。みんな護岸工事してて、浜があるとこないんだけど、まあ、そういった、ちょっとした利用者の希望なんかもドンドン吸い上げてくれはって、いいなあと思っています。今回はオンブズマンの方から依頼がありまして、施設の職員さんと直接話しがしたい、と言われまして、職員とオンブズマンの交流会なんていうのも開くんですけどね。問題を指摘するんでなくて、施設と利用者の橋渡しをしてくれているという、いいオンブズマンの方に出会えたなと思っています。
今が本当のスタート
今も日々は、できてない、できてない、ということで、苦しんでるんです。非常にもがき苦しんで、抑制はずしなんかでも、今ははずせたから言えるけど、その渦中にあるときは担当が泣きながらはずしてたんです。職員もそうです。みんな泣きながら、苦しみながらはずしてきた。苦しみながらやって来たことを、3ヶ月、半年経って振り返ったら、ああ、こんなことができてるじゃないか、あんなこともできてるじゃないか、って、みんなで話し合えるような状態になってきました。
およそ3年ほど前に立ち上げたフィオーレ南海ですけど、今このときから、よりよいケアってなんだろう、施設を住まいと捉えたときに何ができるだろうということ、今がほんとのスタートじゃないかなと思っています。今やっていることは10年後にスタンダードになればいいと。10年後のスタンダードをめざして、そしたら今何をやっていかないといけないのかということを、着実にやっていこうとしています。なかなか難しいですけど。
私はフィオーレ南海に来て1年半になります。私にとってこの施設は2つ目の施設です。私にとって働きがいというのは、私たちが利用者にやりたいと思うことを、やりなさいという管理者がいて、それを正しく評価してくれる管理者がいてくれること。それが私たちの自己実現であって、働きがいということに繋がってくるんではないかなと思うんです。そういうことを感じ取れるような施設だと思っています。
実際に来ていただけることがありましたら、なーんだと思われるかも知れませんが、中では結構みんな、毎日利用者も職員も頑張ってやっていますので、機会があればおいでください。
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