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「痴呆のケアとコミュニケーション」
講師 梁 勝則さん
(日本ホスピス在宅ケア研究会事務局長・はやしまクリニック院長)
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回想法について
ナオミ・フェイルのバリデーション法の中で、回想法は有効ではなかったと書かれています。その一説をちょっと読んでみますね。「お年寄りに対する回想法の利用は1963年、マホン、ルーリック、パトラーらによって最初に提唱されました。それ以後、回想法はお年寄りの側で働く人びとが用いる重要な療法の一つとなりました」というふうになっています。
回想法というのは、個人的、あるいは小グループのお年寄りと一緒に思い出話をして訓練をすれば良くなるんじゃないかと。そして、社交性や心への刺激を促進し、お年寄りを混乱した状態から救い出し、自尊心を取り戻すことが出来るのではないか。
回想法をすると実際に良くなるかどうかなんですが、ナオミ・フェイルは「バリデーションとは異なり、回想法は先ほどの4つのステージのうちの失見当識に陥った人や、繰り返し動作にいるお年寄りにはあまり効果的ではない。これらの人々、つまり記憶障害がひどくなった人々とは、その時その時はよく理解していてもすぐに忘れてしまうので、現在起こっていることの道筋の連続をまったく失ってしまいます。つまりそういった記憶障害の強いお年寄りは過去に生きているのです。従って彼らははっきりと認識して思い出話をすることが出来なくなっています」というふうに書いています。
あと、人生の回顧療法というのが回想法と同じ定義で使われている場合もあります。自分の人生を見直すことによって、意味のない対処方法に気づいて、有効な手段を見いだすのではないかと、これを「ライフレビュー療法」といいます。これもよく似た方法です。しかし、失見当識にある人びとには有効ではないと彼女は書いています。
私自身は、実は回想法とか、ライフレビュー療法をしたことはなくて、彼女はおそらくやったんですね。やって、良くならなかったんでその方法を今は使わなくなったんだと思います。だから、うんと軽い人の場合に回想法は有効かも知れませんねただ、回想法が有効だと感じている方いらっしゃいますか。回想法によってその人の問題行動が減ったりするかどうかですね。つまり、その人を苦しめるのは記憶障害ではなくて、問題行動と問題行動に対する周囲の反応ですから、それが良くなるかどうかなんですけど。もし良くなった事例があれば教えて頂きたいなと。
介護員の方 良くなったということではないんですけど、老人のコミュニケーションのレベルの人たちの中でそれをいれると、感情の発散になって、その場で気持ちがすっとする、という意味では効果があると思いますけど、継続した効果はあまり認められないかなと思います。
講演者 ありがとうございます。今おっしゃったのは、仲間同士で思い出話風にやると、顔見知りの関係になるし、非常に感情が穏やかになる、ということですね。回想法を他にやってらっしゃる方いらっしゃいますか。ということで、軽い方には有効かも知れない、実は有効かも知れないとは書いてないんですけどね、多くの痴呆の方には有効ではないと書いてます。また是非お読み下さい。
診療所勤務の方 在宅で痴呆の方と関わることが多いんですが、痴呆の高齢者の方の大部分は御家族さんがケアされてるんで、ショートステイとかデイサービスとかを組み合わせても、御家族のケアも必要だなと感じてます。家の中で過ごす時に、痴呆の方は御家族との関わり方でかなり変わってくるとは思うんですけども、必ず進行していった、最後は施設入所しかないと言う状態になっていく現場をいつも見ていますが、先生のほうでは、御家族の方に利用者との関わり方の指導や悪化させない方法などはどのようにされてるんでしょうか。
講演者 このバリデーションを紹介しています。「よくわかりました、でもできません」と言われる方が多いんですね。理屈ではわかるんですが、これを実行すると言うのはなかなか困難ですね、家族の場合ね。でも、ずっとこれからも続けていこうと思うんですが、少し態度が変わるだけでもずいぶん良くなります。だから、在宅をやってる方は気づいていると思いますが、家族が悪くしていることが多いですね。家族がうまく対処できれば多くの痴呆の方はかなり快適な在宅生活が送れると思います。これはあきらめずにやっていくことでしょうね。
将来、私たちのほとんどはひとり暮らしになりますので、家族問題はむしろあまり発生しなくなる可能性がありますけど。重要なことは、男は寿命が短いですから、痴呆になる前に死ぬ事が多いけど、女性は長生きする代わりに3分の1が痴呆になるということね。その時にどういうケアが受けたいかという、当事者に関係した問題でもあるんです。
私の知り合いで、一番悲惨なのは、お父さんが痴呆だったんですが、公文式算数ドリルをさせてる人がいました。トレーニングしたら良くなるんじゃないかというのがリアリティオリエンテーション法だし、回想法の一部もそうなんですね。トレーニングは、全部とは言いませんが100人やって99人は失敗に終わると思います。
家族の方 お財布の話しで、家の場合は財布の入った鞄がたびたびなくなるんです。それで家の中におりますもんで、絶対あるので私は捜すんですね。捜さないとずっとそれを気にかけて、一晩でも捜しているし、見つからないと体の状態も悪くなるので、私は捜すようにはしてますがそれはどうなんでしょう。
講演者 それでいいですよ。さっきは財布をなくしたと言ったとき、すぐ一緒に捜すのがうまくないと言ったんで、コミュニケーションをまず十分に。その人は何故そういうかというと、愛情に飢えているか、役割を失っているか、孤独であるか、周囲から傷つけられているか、要するに心が傷ついているということを別の表現でしているんで、コミュニケーションが必要ということですね。財布は毎日なくなるでしょ。やっぱりコミュニケーションで精神的に満足しないと毎日財布や鞄はなくなるんです。その方はコミュニケーションが必要です。とられたんじゃなくてなくしたと言ってますか、その方は。
講演者 高齢者の問題行動というのは実は何かというと、それはその人が若いときの人生の体験に強く関係しています。何か財布かお金に関係して、自分の人生の中で十分感情を発現できなかった未解決の問題がその人にはあります。それを探し出すのがバリデーションなんです。
高齢者の記憶というのは、これは皆さんも同意して頂けると思いますが、高齢者の記憶というのは、埋もれた、閉じこめた感情体験の発露です。つまり、強く心に残っていて、十分言葉として発現出来なかった体験が繰り返し繰り返し出てきます。それが高齢者の記憶であり、高齢者の問題行動です。つまり、若い頃に深く心に刻み込まれた記憶が歳をとってもよく保たれています。
最近の記憶をなくしてくると、つまりさっきの財布の話しですと、財布の入った鞄を布団の下に置いたという、何々したという記憶がなくなってくるとどうするかというと、過去の記憶の中からいろんな出来事をたぐり出してきて、それがあたかも今起きているかのように行動します。つまり、「財布を誰かにとられた」、あるいは、「会社に行く」、というふうに言います。
これは何か、実は自分にとっての癒しなんですね。過去に遡ることは、実は自分への癒しになっています。それで、「誰それがとった」というふうに他人を非難しますね。実はそれは、他人を非難するのは心から非難しているんではなくて、自分は忘れたかも知れないというふうに実は思ってるんですよ。自分の失敗かも知れない、あるいは過去に重大な失敗をしたことがある、その自分の失敗の記憶を癒すために他人を非難するんです。
だからほんとに人が悪いと思っているわけではなくて、過去に起きた様々な未解決な問題が問題行動となって発現してるんです。問題行動のある高齢者の場合、心に傷をもって生きているんだなと思って間違いないです。これが先ほど言った理由や背景のない言動はないということですね。それを発見することですね。もしかしたら今質問された方はもうすでにそれを発見しているかも知れません。
それは義理のお母さんですか? そのお母さんの心の中に止まっている未完の思いというのが何かというのを見つける事ですね。今おいくつですかね、74歳ですね。ということは戦前生まれですから、戦前、戦中、戦後の、昭和25年までは結構大変な思いをしているはずなんですよ。つまり、70代の人で、生まれてから今まで順調に人生を送っている人はほとんどいないんですよ。
どこかで筆舌に尽くしがたい苦労をしています。その苦労をみんなそうだからということで、心の中に閉じこめていらっしゃる方が実は多いんですよね。痴呆になるとそれが未解決のまま残ってますから、問題行動として間接的な形で発現します。私が外来で診ている方の、ほとんどの方はそれがわかりました。それはかなり長いコミュニケーションをするということと、その人の人生を知っている家族の人から聞くことでわかりました。
これはコミュニケーションするとたいていわかりますよ。ただ、さっき私が、一番コミュニケーションが困難なのは家族です、と申しましたが、その中でもコミュニケーションしたくないのは、嫁姑関係なんですね。つまり、聞くと止めどもなく聞きたくないことが一杯出てきそうなんで、聞きにくいでしょう。それができると発見出来ますけどね。兄弟から聞いてみるのもいいですけどね。何か辛いこと、とても嫌なことを経験しているはずなんです。私はこんな辛い思いをした、こんな嫌な目にあった、ということが言えなかったはずなんですよ。それを発見してください。発見できますよ。
前、私は、娘夫婦と暮らしている、暴力を振るうお婆ちゃんがいたんですよ。それは、娘夫婦が夫婦げんかすると婿殿に殴りかかっていく人がいたんです。それで娘さんは困って、よく聞いたら、若いときに自分の夫が愛人つくって家出して、自分ひとりで娘三人を育てたんです。で「あんた、男好き?」と聞いたら「大嫌いや」とおっしゃいました。でもそれは私には決して言いませんからね。でもそれを聞いて、その人が感情表現出来たら良くなりますよ、そこまでのプロセスが大変ですけど。
ヘルパーの方 痴呆の男性の方が、体を触ったり、いろいろ嫌なことをされるのをどうしたらいいのか悩んでるんですけど。
講演者 性的問題行動のこと難しいですね。結構女性の方ではあることでしょう。痴呆あるお年寄りが女の人に触るのは、自分が35歳とか28歳と思っているからなんですよね。自分は若いつもりでいるんです。きっぱり断るということは必要だと思うんですが、コミュニケーションをどうするかですよね。川崎さいわい病院の先生とか、他の教科書には、「ちょっと待ってね、前で亭主が待っているから」というのが有効だと書いてあります。
「やめてよ、エッチ」とかいうのはまずいかなと思うんですが、別の本では、距離をとりなさい、と書いてましたね。70p以上近づかないように。でもそういうわけにはいかないですからね。彼女だと思って抱きつく、可愛いから彼女にしようかな、と思っているわけでだから、俺はスケベーじいさんだと思って抱きついてるわけじゃないんで、「私、彼がいるの」とか「夫がいるの」とか言うと、取りあえずは。では毎回繰り返しますよ。
人の心というのは階段状には良くならないんですよ。今言ったバリデーション法でも、次行くと良くなって、また次ぎ行くと良くなって、というにはいかないんですね。人の心の変化というのは螺旋状です。同じコミュニケーションを何回もしながら少しずつ問題行動が減ってくるんです。ですから、バリデーションを3日したらその人の問題行動かおさまるということではないです。ある人は3日でおさまるでしょうし、ある人は一ヶ月かかるし、半年かかるかも知れません。
いずれにしても、その人が螺旋状に癒されていって、だんだん問題行動が減るということです。人の心の変化は螺旋状というのは是非ご記憶におとどめ下さい。私は実は(グリーフケア)というのもやっていますが、この中でおそらく離婚した方とか、あるいは死に別れた方とかいらっしゃると思うんですが、自分の夫と死に別れた経験のある方はわかると思いますが、堂々巡りしながらゆっくり回復していきます。直線的に回復して「私、今日から新しい人生を行くの」とはならないですよ。だんだんと回復していくんです。痴呆の方も一緒です。
介護助手 介護病棟に入院されている叔母ちゃんなんですが急に変貌されたりすることがあるんです。おむつ交換のときなんかでも、こっち見て、すごく丁寧だなと思ったら、こっち見て、みそくそに言われて、だんだんテンションが上がってくると、ひっかく、つかむ、叩く、こっちもどうしても防ごうとしますので、それも良くはないと思うんですけども、で、さんざん言いたいこと言うて、その変貌ぶりというのが何なのだなと気かかるんですけども。
講演者 一つは忘れるということ。さっき怒ったことが忘れられるから次に「ありがとう」と言えるんですね。その方は記憶障害か強い人だと思います。二つ目が、怒ったときには、怒る前にその人にとってすごく嫌なことをされているという、その二つが理由ですね。だから、問題行動というのと介護抵抗という言葉があって、その人にとって抵抗したくなるようなケアを実は私たちはしてるんですよ。でもそれも仕方がないときがありますよね。例えば、ウンチがついたおむつされて歩かれたら困っちゃうし、さあ、どうしましょう。
お勧めは、その時は何もしないで、怒りがおさまるのを待つのがいいと思いますね。ニコニコしながら、大丈夫? どうしたの? どこか痛いの? とか言ってね、出来ないですよね、現場では、やっぱり唾などをかけられたらね、思わず突き飛ばしたくなりますよ、途中で止めますけどもね。気持ちはよくわかりますが、その時に一回手を離してあげるといいですね。ニッコリ、口を横に開いて、コミュニケーション。オープンクゥェスチョン、肯定的傾聴、で、リフレージング、「黙れ、婆あ」なんて言われたら「黙れ、婆あなのねぇ」とか。リフレージングは有効ですよ。
ヘルパーの方 アルツハイマーの方のところに入ってくれと言われましたが、プランは2時間半あるんです。それで最初の30分は奥様と一緒に過ごす、あとの2時間は、奥様が疲れているということで出かけられ。その2時間をただ見守りをしてくれというんですね。昼食とお薬を飲ませる。ヘルパーだとなかなか食事もしないし、お薬も飲まない、無理矢理飲ませるとだめだから飲まないときは飲ませないでいいと言われて、なにか起伏が激しいので「帰れ」と言われたら、玄関出て、影から見るとか、そういうことを言われてるんですが、私としては、入ってないだけにすごく恐怖感があるんですね。こんな私でも出来るんでしょうか。
講演者 まず笑顔で入る事ね、それが出来るかどうか。というのは、人の感情というのはIQとはあまり関係がないんですよ。痴呆の人も感情とかプライドというのはほぼ正常に保たれています。特に今のような方は痴呆の中でもわりと軽いほうですよね。そういう人はプライドや感情はまったく正常です。ですからこっちが緊張した顔で入るとわかるんですよ。まず笑顔で入る。次に自己紹介をする。名前と所属をちゃんと言って、男性の場合は、「よろしくお願いします」とか「おじゃまします」というふうに。
そのお爺ちゃんにとっては知らない姉ちゃんが来るわけですよ。知らない姉ちゃんが来て、恩着せがましく俺の世話をする、俺は世話になんかならねえや「帰れ」というわけね。「おじゃまします」と言えばいいです。「何かお手伝いすることありませんか」「私ヘルパーですからいろいろおっしゃっていただいてけっこうですよ」でも、バリデーションの原則は相手の世界の中で話しをするということですね。つまりこれは何かというと、まさに役者を演じるんです。
あなたが、あと心配しているのは「帰れ」と言われたら「じゃあちょっと帰りますね」と言って、5分経ったら、失礼します、おじゃまします、入ってもいいですよ。というのは、その人がもし記憶障害が強ければ5分経ったら忘れてるかも知れないんですよ。何よりもそれをしてみるとその人の記憶、障害が軽いかどうかわかりますよね。5分後に行って「どうぞどうぞ」と言ったらかなり重度の記憶障害があるということがわかりますよね。で、痴呆の軽い人はしばしば怒りっぽいお年寄り、クレームの多いお年寄り、というふうに言われます。どうコミュニケーションできるかですね。向こうがこっちを見ているときに、ニッコリしながらこれをやってみて下さい。
スタートが(肯定的傾聴)笑顔で、相手が言ったとおりに繰り返す。「俺は今日は腹が減ってないんだ」、「ああそう、お腹減ってないのね」、「じゃあお昼ご飯食べなくても大丈夫かしら」、「そんなこと言ってないだろ」や「じゃあ食べようか」とかね。とにかく首を縦に振りながらコミュニケーションする。やりにくいと皆さん感じてらっしゃいますか? これは辛いですよ。これが出来るためには、私たち自身が高度に冷静で理性的でないとできないです。ムカムカときたら「少しトイレ行ってきます」と言って、深呼吸を8回する。そしてまた向かい合う。殴られたときも同じようにね。
ナオミさんはさっき言った、エッチで暴力的なお年寄りにさんざん殴られてます。その時は自分も辛かったと書いてますね。行くたびに部屋の前で、「この爺ちゃん嫌いだ、この爺ちゃん嫌いだ、ハア、ハア」とやって、「どおですか?」とかいってますね。それを何回もやって、やっとおとなしくなってます。そうやってうまくコミュニケーションできて、皆さんを信頼して、皆さんと親しくなったときの喜びは何事にも代えられないです。だって、みんなが、手がつけられないボケ爺ちゃん、といった人が、表情が良くなって柔和なお爺ちゃんになったら、これはお金で買えない、給料では代えられない素晴らしい経験です。本当に簡単にできますよ、やってみてください。「傾聴、リフレージング、質問」の3つですから。それと笑顔を絶やさないこと。
ヘルパーの方 すいません。30分最初に奥様といらっしゃるわけですが、その場合、私は、利用者と奥様の関係で、どういう関係を持ったらいいんでしょうか。
講演者 関係というのは、どなたとコミュニケーションしたらいいのかですかって事ですよね? それは話し出している人とコミュニケーションしたらいいと思います。家族ケアの話しがさっき出ましたが、奥さんもすごく苦しんでますから、奥さんの方が一杯しゃべると思うんですよ。「ほんとにこの人ったらどうしようもないのよね、すぐ怒るし、」と言ったら、「ああ、そうなんですか、怒るんですか、大変ですね」と、奥様にもバリデーションを用いるんです。
実はコミュニケーションというのは語りかけることではなくて(聞くこと)なんですね。(傾聴すること)(リフレージングすること)(尋ねること)がコミュニケーションなんで、「何を話そうか」悩むと行く前から行きたくなくなりますから、どう質問しようか、どう笑顔で聞こうか、どう反射的なリフレージングをしようか、と考えるだけでいいです。語りかけなくていいですから。
つまりどんな話題で話をしようかというのは、痴呆の方と話しをするときは自分の話題を話すことはいっさい考えなくていいです。ほとんどの人は聞いてないです。だから皆さんの体験は何も話さなくていいです。だから楽でしょ。聞いていればいいんです。だから、困ったら質問する。おしっこ大丈夫? とかね。これは失敗してもいいですからね。3原則さえ守れば、大きな失敗はしませんからね。
介護員の方 暴力的で、椅子を投げる、テーブルを投げる。人の部屋に平気で入っていってごそごそする、人のベッドに寝る、という男性の方なんです。会話も十分にできない方です。言っても意味不明な事ばっかりで、そんな方とのコミュニケーションを最初どうやっていったらいいかなということをお願いします。
講演者 リフレージングするんです。意味不明に聞こえても実は彼は意味があることを言っているんですよ。その人が言った曖昧な言葉のままで、「-------なのね」と言ってあげるんです。聞こえるように。そしたら「んだ、んだ」と言いますから。それと、目を合わせるということと、そういう人はタッチングが有効ですよ。スキンシップがすごく大切です。彼が何か暴れているときは彼は怒っているんです。何か理由があるんですよ。その理由を口で言ってます。是非リフレージング・スキンシップしてください。
やってはいけないこと「まあ、そんなに怒らないでお茶でも飲んだら」というと失敗するんですよ。「どうしたの、何怒ってるの、大丈夫」とスキンシップしながらね、手を握ってね。暴れる人の手を押さえないで、一緒に動くんです。ただし、殴られないようにご注意くださいね。これをやると何回かどつかれます。ナオミ・フェイルさんはあざだらけになったと書いてます。靴を投げられてあざができたと。ただ、相手に逆らわず、相手の動きに合わせているうちに、彼は救われたと書いてますね。今あなたがおっしゃった方は明らかに何かに怒ってますね。
介護員の方 私は重度痴呆性老人の専用棟に勤めています。さっきから言ってくださってるようなことをうちのスタッフも結構頑張ってやってるんですが、頑張りすぎてそのスタッフたちがとてもしんどい思いをしているのをどうしてあげたらいいかなというのをお願いします。
講演者 しんどいですね。重度になるとやってもやってもだんだん植物状態になって達成感がないですよね。スーパーバイザーが必要です。つまり、痴呆のプロで、スタッフの気持ちをよくわかってくれる人が必要です。一つだけ言いますね、その人たちを救う方法は、ピアカウンセリングという方法です。ちょっと流行の言葉で言えば(傾聴ボランティア)という方法は燃えつき症候群になるのを防いだり、先延ばししてくれるかも知れません。全ての人は、自分の存在を受け入れてくれる自分以外の人を必要とするんですね。人は独りぼっちでは生きていけないですね。ほんとに頑張っているスタッフを受けとめて、悩みを聞く人がいりますね。
介護員の男性 エッチなお爺さんの話とは逆で、入居されている方は私のことを、昔の不倫相手だと思って「なんで今頃になってここに来たの」と。今は小康状態ですがこういうときはやっぱり肯定的傾聴でよろしいでしょうか。
講演者 彼氏として精一杯ふるまうことをお勧めします。ただ、別室でおやりになったらいいんですが、その女の人は幸せですよね、特養に入ったのに昔の彼氏に会えるんですから。皆さん、もしそうだったらすごく幸せでしょう。その人の幸せを奪う権利は誰にもありませんから。バリデーションの原則は、相手の世界でコミュニケーションすることですから、是非彼氏としてふるまってあげてください。あなたはその人にとって天使だとおもいますよ。小康状態というのはしばらく忘れてるのだと思うんですけどもね、そのうちまた思い出しますから。
まとめ
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◆ 1日に5分〜10分
集中してバリデーションを行うのは、1日5分〜10分。繰り返すうちに、問題行動の回数は減っていくとナオミ・フェイルさんは言います。
◆ 痴呆の親を介護する場合
感情が入るのでつらくなります。でも1日に5分、全てのエネルギーを使って話を聞いてあげて下さい。お父さんが怒っているのなら「パパ、怒っているのね」と言って下さい。話を終える時は「怒っているのね、それはよくわかるわ。私は行くけど、また帰ってくる」と言えばいいでしょう。
◆ ナオミ・フェイルさんの著書
「バリデーション―痴呆症の人との超コミュニケーション法」筒井書房
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Q.食事した後に「まだ食事をしてない」と言われたら?
A.「あら、まだだったのね。ごめんなさい」と相づちを打ちます。「すぐに用意をするから、それまでみかんでも食べてて」と果物などを渡したり「もうすぐお正月ねえ。今年は何をつくりましょうか?」などと話題を変えたりすると、注意が別の方向に向き、食事の事を忘れてしまうでしょう。
* 言ってはいけないこと。
「今、食べたばかりでしょう」「これ以上食べるのはだめよ」食べた後のお皿を見せて「ほら、食べてるでしょう」など
Q.被害がないのに「お金を盗まれた」と言われたら?
A.「あら、大変だわ」となくなったことを認めて、気持ちを受け入れます。「それでは、確かめてみましょう」と高齢者の財布のお金を本人に数えて頂きたき、「ちゃんとありましたね、よかったですね」などと納得してもらうようにします。あらかじめタンスの中など(決まったお金の置き場を高齢者とつくっておき、そこを確認するのもよいでしょう。本人の落ち着く方法をとってみてください。
* 言ってはいけないこと。
「だれも盗んでないわ」「いい加減にしてよ。自分で使ったんでしょ」など。
Q.自宅に居るのに「そろそろ家に帰らないと」と出ていこうとしたら?
A.「そうですね」と気持ちを受け入れます。
「そんなに帰りたい家には何があるのですか?」とご本人が楽しく話せるようにするとしだいに興味が変わり、落ち着くことも多いものです。気持ちがおさまらなければ「じゃあ、一緒に帰りましょう」と言って、家を出て、近くを散歩し「さあ、帰って来ましたよ」と、自宅に戻ると、家に帰った気になる場合もあります。
* 言ってはいけないこと。
「ここはあなたの家よ。わからないの」「すっかりボケたわね」
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