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「介護保険での住宅改修と福祉用具」
講師■谷口 昌宏(たにぐちよしひろ)さん
<介護支援専門員協会理事・介護支援専門員・理学療法士>
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介護保険で利用できる住宅改修と福祉用具について話させていただきます。質問もお受けし、最後に80枚のスライドで実際の活用例を紹介します。15年4月から介護報酬などが改定になりました。住宅改修・福祉用具については削除された項目はありませんが、レンタル項目として5品目が追加となりました。後程詳しくお話しいたします。
私は理学療法士ですから、初めてお会いしたお年寄りを見ても、膝が腰がどの程度悪いかが分かります。本人や介護者の動作をよく観察することで、大まかな身体状況が把握できます。
例えば、上がり框の昇降の際に、下駄箱や台を支持しているのか。廊下の移動の際に、何も持たないで歩けるのか、杖を使用しているのか、どこかを持っているのか、さらにはどの程度頼っているのか。居室での立ち上がりやしゃがみの際に無理なく行えているのか、台を支持しているのか、倒れこむようにしゃがんでいないかなどをよく観察してください。そうすれば、どのように困っているのかがはっきりし、住宅改修や福祉用具の活用が具体的になってきます。
病院でリハビリをしていても、家に帰ったら持つ所がないので、怖くて何もできないということがあります。「頑張って立ちましょう」「頑張って歩きましょう」と言われても支持するところがなければ、怖くて立つことさえできません。手すりを取り付けたり・踏み台を置くだけで、負担なく・安全に、安心して動作ができます。入院中に行っていたリハビリをそのまま実践できます。生活の範囲が拡大し、転倒事故を防止し、機能維持に役立つことになります。「転ばぬ先の手すり」です。介護保険制度を利用すれば、わずかの負担で手すりを取り付けることができることを、もっと多くの方に知ってもらいたいですね。
ある高齢の女性から、トイレに手摺りを付けてほしいという相談が入ったので訪問しました。お婆ちゃんの右手の5本指にはバンドエイドが巻いてありました。
トイレを見せてもらい、実際座ってもらい普段の動作を確認するのです。お婆ちゃんが立ち上がるときにびっくりしました。トイレットペーパーホルダーのカッターを持って立たれたのです。ちょうど手の届きやすい所にあるんですね。そこを持って立ち上がるから、右手を切ってバンドエイドを巻いてあったんです。「ここへ手摺りを付けましよう」とすぐに決まりました。
業者から手摺り工事完了と連絡を受け、見に行きました。ペーパーホルダーがあった位置に付いた一本の手摺りを持って、楽に立ち上がったり座ることができるようになっておられました。もうその人の手には、バンドエイドが巻いてなかったのです!…ここ感動する場面なんですけどね。そういう視点を大切にしたいですね。
一本の手すりがリハビリテーションの実践です。
選介護保険でどこまでできる、
福祉用具と住宅改修=3つの枠
(1) レンタル (2) 購入 (3) 住宅改修 の3つの枠があります。
車椅子や介護ベッド等はレンタルになります。入浴補助用具や排泄用具は購入で年間10万円の限度額です。住宅改修は一生に20万円の限度額です。介護保険ではこれらの3つの枠があるってことをまずは確認しておきましよう。
基本的な福祉用具はレンタルになります。レジュメに12種類が具体的に書いてあります。知っておいていただきたいのは、レンタル項目の手摺りです。取り付けに工事を伴わないものとなっています、つまりネジを打ったりしない手摺りです。ネジで固定する物は住宅改修になります。トイレガードという洋式便器からの立ち上がり用のフレームです。それから、マンションなどで、手すりが取り付けられない場合に、平行棒を置くことができます。その平行棒もレンタルになります。工事を伴わない手摺りとは、そういうことなんですね。
レンタル料金は要介護度別に決められた限度額に含まれます。どのような福祉用具をレンタルするかは、ケアマネジャーさんと相談して決めていくことになります。
(1) 福祉用具のレンタル
レジュメに12種類の用具が書かれていますが、これらをレンタル業者より借り、そのレンタル料金の1割を払うことになります、9割は保険が利きますから。介護保険では多くの福祉用具はレンタル扱いで、排泄用具や入浴用具等は購入の扱いになります。15年の4月より5品目が追加になりましたので、そのことを説明します。
◆ スライディングボード
プラスチックの板をベッドと車いすの間に置き、お尻を滑らせて移乗させるのです、レンタルの対象品になったんです。トランスファーボードと言うこともあります。肘受けの横の板が跳ね上がったり・取れたりする車椅子といっしょにを使うことが前提です。日本の介護は、今までは根性介護なんですね。力を入れて頑張るみたいな。外国では、介護者が腰痛にならないような介助用具が、当たり前のように使われてるんです。スライディングボードもその例です。やっと今回、介護保険の対象品に入りました。
◆ 六輪歩行器
以前は二輪、四輪だったのが、今回の改正で車輪は何輪でもいいとなりました。六輪ってのは、くるくると小回りが効くと思ってください。真ん中に普通の、大きい車輪があって、前後に小さい車輪が4つついた歩行器です。六輪の車椅子も同じです。
◆ 移動用リフト
以前は垂直かつ水平に動く物となっていました。今回より垂直つまり上下方向にのみ動くリフトも対象になりました。例えば、風呂に入る時に電動で腰掛けの板が上下するようなリフトがあります。浴槽内での立ち上がりや座り込みが楽になります。
◆ 起立補助機能椅子
お尻をちょっと持ち上げてもらえば、立てる人は結構おられます。電動で座面が上がってくれれば、立ち上がりが楽になります。起立補助という名前の通りのものです。
◆ 段差解消機
例えば、家と庭の段差が大きい場合に、傾斜からスロープを考えるとかなりの長さになります。電動で上下する台に車椅子を載せれば、長いスロープを設置しなくてもすみます。
(2) 福祉用具の購入
要介護度に関係なく、ポータブルトイレ・入浴補助用具・簡易浴槽・特殊尿器・移動用リフトのつり具の部分などを、年間10万円まで購入できます。4月1日から始まって3月31日で終わる1年間です。4月 1日になればリセットと呼ばれ、また10万円使えることになります。
和式便器の上に置いて簡易式に洋式便器にするものもこれです。シャワーいす、踏み台、すのこもこれです。介護保険で一割の負担で購入できます。
ここでワンポイントです。福祉用具の購入に関しましてはレンタルのような指定業者がありません。まず全額立て替えてください。そして、後で領収書で九割が戻ってくる申請をします。これを償還払いといいます。
(3) 住宅改修
◆ 住宅改修でできること
床の材料の変更・滑りの防止や移動を円滑にするために床材の変更ができます。
例えば、風呂で滑るので滑らないタイルに変える。移動を円滑にするというのは、畳では車椅子が移動しにくいので、畳を板の間に替えることで車椅子の走行を円滑にするということです。扉の取換もできます。例えば車椅子の出入りをスムーズにするために横に開く扉に換えるとか、扉を大きいものに取り替えることができます。
それから、和式便器を洋式便器に取り替えることもです。
◆ 二つの特例
住宅改修は支給限度額が20万円ですが、二つの特例があります。
1、転居した場合
転居をした場合は改めて20万円が設定されます。一から住宅改修をする必要があるからです。
2、要介護度が三段階以上高くなった場合
要介護度が三段階以上がりましたら、また20万設定されます。つまり、介護度が軽い時に行った改修は、使いにくいでしようということです。要支援・1・2の人がその適応です。
◆ なぜ20万円の限度額なのか
厚生労働省の通知によると「被保険者の資産形成につながらないよう、住宅改修について制約を受ける賃貸住宅に居住する高齢者との均衡等も考慮して、手摺りの取り付け・床段差の解消等の比較的小規模なものとしたものである」となっています。
つまり、厚生省労働省は大きな資産になるものは考えていないのです。これは持ち家ならば住宅改修を行うのに制約はないが、賃貸住宅だと制約が出てきます。このため手摺りの取り付けや段差解消等、比較的小規模なもの、つまり基本的な改修を考えています。だから住宅改修は20万なんです。
そして、要介護度にかかわらず20万円の定額の限度額としました。つまり要支援の人も要介護5と同じ限度額です。トイレや風呂に手摺りを取り付けたり、上がり框に手摺りや踏み台を設置したりでも20万円できます。
介護サービスを、車椅子を利用している方や、寝たきりの方が利用すると思っているお年寄りの方が多いようです。要支援の方でも自立支援や事故防止という考えから住宅改修と福祉用具を利用できるのです。
◆ 便器には3つの形式があります
昔は男性用の小便器が手前にあり、奥に和式便器があり2つの便器がありました。
次に約20cm高くした両用式便器(和式)が使われました。これだと男性の排尿もでき、男性も女性も一つの便器で共用できるために両用式便器といわれています。
そして、立ち上がりやすく座りやすく楽な洋式便器へと替わっていったのです。
排便の際に和式便器は肛門が開きやすなりますが、立ち上がりやしゃがみの動作は膝や足首に負担が大きくなります。このために洋式便器が使われるようになってきました。40cm弱の便座の高さは、立ち上がりやすく座りやすい高さです。
洋式便器の形状が下に行くほど細くなっているのは、ここで少し足が引けるためです。「蹴込み」といいます。
◆ 浴槽にも3つの形式があります
日本では浴槽に三つの形式があります。和風、和洋折衷、洋風の3種類です。
昔からは日本人は肩まで湯に浸かりたい。そうすると深くて大きな浴槽が要るんです。お湯の量も節約したいが深さは優先したい、だから肩まで浸かれる幅は狭いが深さが60センチもある深いのが日本の和風の浴槽です。
もう少しゆっくり入りたいということで、幅を少し広くすると骨盤が後ろに傾き肩が下がります、それが深さ55センチ弱の和洋折衷の浴槽です。
そして、高級ホテルにあるような底の浅い洋風の浴槽です。小柄な方ですと足が浴槽の壁に届かず、すべり込んでしまいます。
◆ 浴槽の出入りに便利な用具
浴槽の出入りの介助方法として、またいで入れるなら踏み台や簡易式のバスグリップという手摺りを取り付けます。 またぐことが難しければ、腰を掛けて入るバスボードというものがあります。それから浴槽の中に浴槽台を沈めておくこともあります。出入りがしやすくなったり、また浴槽台に座ることによって股関節・膝関節を無理に曲げずにすみます。特に膝や股関節の手術後には必要です。浴槽台があるだけで立ち上がりも楽になります。これらは最後にスライドでお見せします。
◆ パイプカッターで簡単に杖が切れる
杖の長さが長くて合っていないので、調節杖で試してから、切ってあげると「ほんにこのほうがええわ」と言う人が多いですね。軽く肘が曲がる程度、厳密には30度がいい長さの基準です。金鋸で切るのは大変です。パイプカッターなら簡単に切ることができます。安い物なら1000円程度で、大工用具を扱っている店に売っています。
初めに簡単な質問に各自で記入していただいてますので、その回答と今回の話を聞いていただいての質問があればお答えいたします。
Q.退院のために予め住宅改修しておきたいが、入院中であるため住宅改修が受けられない?
A.これはできます。まず介護認定の申請をしているのが前提です。ただし、役所に事前に問い合わせてほしいんです。改修の内容によっては介護保険の対象外になる場合があります。後でこの改修は適用外ですとなれば自費になってしまいます。
Q.ベッドから立ち上がる際に介助バーが必要な時に、ベッドがレンタルされていなければベッドの付属品として介助バーをレンタルできない?
A.介護保険の当初に、ベッド本体がレンタルされないと付属品のみはレンタルできないということがありました。今は、ベッド本体がレンタルされていなくても、必要ならば付属品だけのレンタルも可能となっています。
Q.木調のポータブルトイレは高価なので買えない?
A.買えます。ただし限度額が年間10万円ですから、高価な物を先に購入すると、他に必要な用具を購入しようとすると困ることもあります。木製のポータブルトイレはしっかりとした構造で安定しています。
Q.家族が日曜大工で手摺りを取り付けた場合に材料費は支給されない?
A.支給されます。パイプ・ねじ・ボンドなどの材料費は出ます。領収書をもらつておかなければなりません。償還払いの請求で九割が戻ってきます。ただしケアマネジャーの理由書は要ります。改修前と後の写真も要ります。
Q.住宅改修にあたり、理由書は介護支援専門員のみが書ける?
A.例えば、私がこの方のケアマネジャーを担当させてもらいますと契約した場合、そのことを役所に届けるんです。これを旨の届出といい、役所のコンピューターに登録されます。このように担当のケアマネがいる場合は、そのケアマネジャーが書きます。ただし、住宅改修だけの方がおられます。誰かが理由書を書いてあげなければなりません。この場合はどこのケアマネジャーでも書けますし、二級以上の住環境コーディネーターも書くことができます。
Q.施設で事故防止として、歩行器はどういう人が適用ですか?
A.理学療法士が評価するのが一番いいんですよね。杖歩行が不安定になってきた場合が考えられますが、必ずテストしてみないといけないですね。歩行器の種類と高さの調整など検討が必要です。
病院で使用しているUの字の歩行器がありますが、屋外で使用できないのです。車輪が小さすぎて、ちょっとした段も上がれないのです。あれでは外へは行けないということを知っといてください。
それでは、スライドが80枚ほどになりますが、実際の活用場面を見ていただきましょう。(終)
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