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「痴呆老人によりそうケア」
講師 置塩 美子さん(精神科医 こころの健康センター非常勤嘱託医)
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痴呆性老人は平成27年に262万人になるという数字があります。この数字、実は大阪市民の数です。平成27年になりますと大阪市民全員が痴呆という時代を経て、平成47年までは増え続けてそれから減ってくるわけです。65歳以上の高齢者の数が減るから痴呆も減るというわけです。高齢社会で痴呆の方が増えるというのは避けられないことです。昔、人生50年といわれていた頃は、高齢社会がまだ来てないわけですから痴呆の数がものすごく少ないわけで、大きな社会問題化しませんでした。欧米とか先進国、平均寿命が延びた国は高齢化が進んで、痴呆が大きな問題になってきています。
痴呆の出現率ももちろん右肩上がりになっています。特徴的な上がり方で、5歳区切りでみると倍々で上がっています。これは先進国共通の特徴です。85歳以上は4人に1人です。それから、平成2年のデータで古いですが、当時75%の方が在宅で介護を受けていました。今は10ヵ年計画でどんどん施設が作られてきたので、在宅介護を受けている方の数の割合は減っていると思いますが、入所の方よりは在宅の方のほうが多いと思います。
それから原因ですが、男性は脳血管性痴呆が多く、女性がアルツハイマー型と脳血管型が半々です。これは男性は生活習慣病に罹りやすく、忙しくて治療しないで日々過ごしたりで、脳出血・脳梗塞になりやすいからです。それから糖尿病・痛風・動脈硬化などの脳の血管障害を起こしやすい病気をたくさんお持ちで、脳動脈硬化をさらに進行させてしまった結果、痴呆になる方が多いからです。要するに痴呆は、ある意味で国民的課題といわれるぐらい避けては通れない課題です。寝たきりの場合は、かなり介護方法が確立されていて、誰にでもわかりやすく、誰がしても同じようにできます。コミュニケーションもとりやすい。それに腰痛を起こさないで介護できる器具も開発されてきています。だから、寝たきりの方の介護は、ある程度お金を出せば介護負担を軽くしつつできるというメドがたってきたわけです。
・こころで介護
痴呆の場合は、こころというか精神の機能が低下することで諸々の症状が出てくるわけですから機械で介護は補えません。人間のこころの病気はこころで介護しないといけない。機械の代替が利かない分、痴呆の介護は寝たきりの介護より、チョット遅れています。ですから痴呆の方が増えていくということは、とても大きな問題ではないかと思います。こころの問題は目に見えにくく、理解しにくいものです。寝たきりの方なら、例えば右半身が動かないとか、身体の向きが変えられないとか、歩けないとかお箸が使えないとか、見たらすぐにわかります。痴呆の方はなぜ徘徊をするのか、夕方になったら荷物をまとめて家に帰ろうとするのか、何で?と理解できないことが多いと思います。それは精神世界が見えないからです。
精神の機能を、知的・情緒的・意欲的な機能の3つに分けて考えるとわかりやすいと思います。痴呆は、知的な機能が主に持続的に進行的に落ちていきます。意欲も落ちていきます。関心が無くなったとか、やる気が無くなったとか、意欲の面が落ちてきてこれが初発症状として見つかることもあります。ところが、情緒的な機能、介護してくださる人の感情を感じ取る力というのは全然落ちません。むしろ知的・意欲が落ちている分、馬鹿にされていないか鋭敏になるくらいです。変な言い方ですが、精神機能が3つとも同じように下がると介護しやすいですけど、感情が敏感に残っている分、かえって介護を難しくします。機能が落ちているからといって怒ったら、感情は残っているわけですからね。簡単に叱ったりできません。だから、痴呆の方の介護はコツがいるというか、センスがいる。人によっては、こんなに面倒くさいことは嫌という人もいます。向き・不向きはあります。ヘルパーさんの場合、どうしても嫌という場合は、私は無理にしない方がご本人のためにも、介護者のためにもいいと思います。
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